バルサミコ酢

esmileelife2007-12-20


はい,有本です.イタリアで3回目となる非抜歯矯正セミナーは,エミリア州のモデナで開催されました.これまでの,シーフードと太陽とサルトリアのナポリとはまた違う北部イタリアを体感することができました.

特に今回は現地でのセミナーをコーディネートしてくれたピエトロ先生の計らいで,伝統的なバルサミコ酢の醸造家フェラーリの工場を見学させてもらう機会に恵まれました.まず報告第1弾はバルサミコ酢から.

バルサミコ酢は,ぶどうだけを原料に木製の樽でひたすら熟成されて出来上がります.熟しきったぶどうを30%くらいになるまで煮詰めて濾したものを,木製の樽に入れて醗酵させます.一つの樽に5年間.5年経つとそれまでより少し小さい樽に入れ替え,また5年間.樽の木材の種類も5年ごとにクルミ・サクラ・ナラなど変わっていきます.順番があるのですが忘れてしまった.醸造家によって違い,いろいろ試してみては美味しい物ができるように追求するそうです.そして25年熟成させてやっと完成です.最後には1/100くらいに凝縮されるそうです.出来上がったバルサミコ酢は,政府の検定に出され,合格したものはすべて,車のデザインなどで有名なジウジアーロがデザインした小さなボトルに入れて出荷されます.逆に言えば,このボトルに入っていないものは政府の検定を受けていないものです.この25年ものは現地で1本100ユーロ.

その醸造小屋の中に醸造家のおじさんのプライベートワインセラーがあり,たくさんのワインと,同じくこの地方で有名な生ハムが天井からぶら下がっていて,こりゃいーねー,と思っていたら,テーブルが用意されていてパルメザンチーズと生ハムと,そしてバルサミコ酢ランブルスコをいただくことができました.『本物』のバルサミコ酢はとっても粘稠度が高く,瓶をひっくり返してもゆーっくりと1滴ずつしか出てきません.味は濃厚なプルーンのような,おいしい養命酒?のような感じ.この1滴を陶器製のスプーンにたらしてなめたり,あるいはパルメザンチーズにたらしていただきます.これとランブルスコを合わせると,ほかは何もいらない,という幸せな感じになります.ランブルスコはこの地方特有の発泡赤ワインで,今回の旅は毎日これをいただいたので,懐かしくて帰ってから成城石井で探すと,ありました!

バルサミコ酢ができる過程は,まさに気の遠くなるような作業ですが,屋根裏部屋のようなところにひっそりたたずみながら醸造されていくバルサミコ酢と,それを前に嬉々として説明してくれる醸造家のおじさんをみていると,これぞ究極のこだわりというか趣味というか,とにかくパッション・情熱がなければとてもできるものではありません.そしてそのパッションで出来上がったものを認めるイタリア社会.このおじさんもとても裕福で自宅は都会の一等地にあるそうです.この辺り,とにかく効率を優先するアメリカとは明らかな違いを感じます.

バルサミコ酢なんて,正直言ってほとんど知らなかったのですが,ここへ来て,にわかバルサミコ博士になってしまいました.イタリア北部,エミリア美味しんぼの旅,まだまだ続きます.